2/26 県が見切り発車、深まる対立




産経新聞社 2010年2月26日 朝刊




小豆島・新内海ダム着工 県が見切り発車 深まる対立





 香川県小豆島町で、県と町が新ダムを建設する「内海ダム再開発事業」がついに動き出し
た。事業をめぐっては地元に賛否が渦巻き、昨年に現地視察した前原誠司国土交通相も県に
再検証を求めたが、真鍋武紀知事は推進姿勢を貫き工事に着手。反対派住民や国を押し切
り、見切り発車した格好だ。県と町は計画どおり平成25年度末の新ダム完成を目指すが、今
後の補助金負担に国が難色を示せば、計画がずれ込む恐れがある。着工で地元の対立も一
段と深まり、反対派は事業凍結に向け、徹底抗戦する構えで、事業の行方は予断を許さない。
(永田岳彦)





 山間部の斜面で、作業員が生い茂る樹木をチェーンソーで次々切り倒す。冬空で静寂さが
際立つ山あいに、機械工具のエンジン音が響きわたり、作業が進むにつれ山肌が徐々にむき
だしになっていく。


 小豆島町で今月22日に始まった新内海ダムの建設工事。3月中には掘削作業に入り、ダム
本体の工事はさらに本格化する見通しだ。





 「まず新内海ダムありきの暴挙だ」。事業に反対する住民グループはこの日、真鍋知事と坂
下一朗・小豆島町長に抗議文を送り、着工に反発する姿勢をあらわにした。


 地元に現在の内海ダムが完成したのは昭和34年だが、以降もたびたび渇水や洪水被害に
直面してきたことから、県と町が貯水量の大きな新ダム建設計画を打ち出し、平成9年に調査
に乗り出した。





 推進派住民は地場産業である醤油生産や渇水対策などの利水面、洪水被害を防ぐ受け皿
としての水害対策を重視し、「災害が起こってからでは遅い」と強調する。しかし、新ダムの建
設予定地付近には名勝・寒霞渓があることから、反対派住民は環境破壊や観光客減少につ
ながると指摘。平成9年に島内に別のダムができたことやこれまで河川改修を重ねてきたこと
などから、「新ダムをつくってもメリットはない」と訴え、平行線をたどってきた。





■再検証に応じず


 県や町とともに、国も事業推進の立場をとってきたが、昨年の政権交代で反対派にも追い風
が吹き始めた。「コンクリートから人へ」を掲げる新政権下で、前原国交相が全国143のダム建
設事業について再検証する方針を打ち出した。


 前原国交相は県などが事業主体となり国の補助金を受ける補助ダムとしては全国で最初に
内海ダムを視察し、今夏に有識者会議で決定する基準に沿って事業を再検証するよう真鍋知
事に要請した。





 これに対し、真鍋知事は「これまで約10年かけて計画を策定しその都度、国交省と相談して
きた。認めてほしい」と応じなかった。事業費についても「同事業の補助金は法律上、国の負
担金。国に裁量の余地はなく、当然いただけるものと考えている」と述べ、県は計画どおりダム
の本体工事に踏み切った。





■不透明な国負担金


 総事業費のうち約半分は国の負担金を見込んでいる。前原国交相は「補助事業は事業主体
の県が決めること」との見解を示しているが、真鍋知事の発言を受け「県がやると決めたら必
ず国が負担しなければならないものではない」と反論する場面もあった。


 県の平成22年度当初予算案には事業費として33億円が計上されているが、今後、国が補助
を見送れば工事が先送りされる可能性もあり、事業の行方に不透明感が漂う。





 反対派住民も、地権者らが事業の認定取り消しを求めて高松地裁で係争中で、法廷論争の
最中の着工に憤りを募らせる。提訴にとどまらず住民監査請求も行うなど、事業凍結に「あら
ゆる手段を講じ徹底的に争う」と不退転の決意だ。





 動き出したダム建設は、国の動向や過熱する反対運動とあいまって、波乱含みの様相を呈
している。












ダム38か所「見切り発車」、国の満額補助前提




読売新聞 2010年3月9日 web版





  政府のダム見直し方針に基づき、国土交通省が建設の是非を再検証するよう求めている
30道府県の「補助ダム」58か所のうち、23府県が38か所の事業費を、国の満額補助を前
提として新年度予算案に計上していることが、読売新聞の調べでわかった。








 補助ダムは、八ッ場(やんば)ダム(群馬)など「国直轄ダム」と異なり、都道府県が国の補助
金を受けて建設する。前原国交相が昨年12月に現地視察して直接、再検証を促した内海(香
川)を始め浅川(長野)、路木(熊本)など5県5か所は本体工事費を計上している。





 国交省は新年度予算案で補助ダムに投じる国費を今年度当初の86%に抑え、3月末に個
所付けを公表するが、香川は「地元住民や産業界から早期完成を求める多くの要望がある」
(真鍋武紀知事)などと内海ダムの満額補助に期待する。





 浅川ダムも、村井仁知事が「流域住民の生命と財産を守るため」と必要性を強調。国が補助
を大幅にカットすれば、各地で工事遅延や計画見直しなど混乱が予想される。「(33億円の)
補助金が減額されれば執行を留保せざるを得ない」(大阪)、「補助打ち切りは想定できない。
県独自に代替財源を確保するのは難しい」(群馬)と戸惑いも広がる。





 国交省は夏頃に作成する治水対策の新基準に基づき、各知事に再検証するよう求めてい
る。ただ、本紙調査では、再検証に「応じる」と回答したのはほぼ半数の15県25か所にとどま
った。










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