ダムを作ると何が問題なの?



                                             建設中の新内海ダム(合成写真)


「流せば洪水、貯めれば資源」と、

高度成長期以来たくさんのダムが造られてきました。


県は、この新内海ダムを作ることで、

洪水の防止、新規の水道用水が確保できるとしています。


もちろん、洪水対策や渇水対策などに必要不可欠なダムもあるかもしれません。


しかし、新内海ダムはたくさんの問題をはらんでいるのではないかと、

疑問を持ち、心配している地元の人達もいるのです。




ダム直下の町から見た景色。

赤いラインが完成後のダムの堰堤の高さです。


反対している地元の方の意見は以下のようなものです。



その@ すでに水は十分足りています。
      これからも心配ありません。

小豆島には平成9年に「吉田ダム」ができました。

かつては毎年のように水不足になることで有名だった小豆島ですが、

吉田ダムの完成以来、取水・給水制限は一度もありません。


渇水で早明浦ダムが水位0の時も、

吉田ダムには200日分を超える水がありました。


また、この地域には8割の家に井戸があり、

田畑にもため池が多くあります。


おいしい水を飲むことができる環境にありながら、

ダムが完成すれば、泥の溜まるダムの水を飲むことになります。


島の人口は高齢化が進み、減り続けています。


ただでさえ、島の高い水道料金が

更に上乗せされるかもしれません。


現在でも、小豆島町の水道代は

20立方b使用で約4,500円/月です。


全国的にも水道の高い香川県の中でも一番高額です。

さらに上乗せされては、水があっても買えないという

状況になりかねません。


今まで地下水で作ってきた地元の醤油産業にも

コストや味の面で影響が及ぶでしょう。


(参考資料 小豆島の水源水量の推移)


H9の吉田ダム完成によって、既存の2.5倍に増えています。

また、小豆島町の水需要予測も、過疎による人口減等により、実績を大きく上回っています。



そのA 完成しても、災害被害を防げません。

小豆島が大災害にあった、S49・51の集中豪雨の時も、

ダムが作られようとしている別当川では

死傷者はありませんでした。


多数の死者が出た島内の他の川に比べて、

被害は軽かったのです。


土石流の被害の大きかった地域は川(水系)が異なるので、

この新ダム計画では防ぐことができません。


また、過去最大の雨量は昭和51災害時の雨量は88o/時でした。

同程度の雨で、新ダムに流入する総水量は42.2万トン。

106万dもの巨大ダムは大きすぎるのではないでしょうか。


それどころか、別当川下流の台風時の浸水は

大きなダムができると、

大量の放水と高潮が重なった場合の被害が拡大します。


平成16年の台風ではひどい高潮被害があったので、

大きなダム建設より、

高潮や津波対策の方に力を入れてほしいのです。


 
そのB 地盤が弱く、変な形なので壊れるかもしれません。

 このダムの建設予定地は地盤が軟らかく、

大きな堰堤が出来ると地面が沈んでしまう恐れがあります。


ダムの途中に、小さな山が挟まった

世界でも例のないへんてこな形のダムになるので、

地面に沈む速さが違うと壊れるかもしれないのです。


ダムの両端はもろい山です。

岩盤のないコンクリートの塊にダムをくっつけて、大丈夫なのか心配です。


ダムの直下200mから2km下の海まで、

家が1000軒、約3000人が暮らしています。


決壊した場合、逃げるひまもないのです。

 





そのC 地震に弱く、壊れる可能性があります。
      大雨で、盛り土が崩れるかもしれません。

 このダムの大きな堰堤の真下に、断層が3本もあります。

この事実を、当初、県は資料に墨塗りして隠していました。


見た目をよくするために、ダムのコンクリートの壁の下のほうに 

15万トンの土を盛って木を植える予定になっていますが、


その盛り土は、下の人家に10mまで迫っており、

大雨で地滑りすると、家が埋まってしまう恐れがあります。




また、地元で「すべり山」と呼ばれる

大雨時に地滑りすることで知られているダム上方の山の斜面に

ダムの掘削で出た土を捨てて積み上げているのが怖いです。



そのD 国立公園・寒霞渓の自然環境・景観をこわします。

島一番の自慢・日本3大渓谷美を誇る寒霞渓に

高さ42m、長さが早明浦ダムより長い447mもの

コンクリートの壁が立ちはだかるのです。


寒霞渓の山頂からは内海湾越しに

「二十四の瞳」の分教場も見える絶景です。


その手前に大きな人工物ができてしまうと、

景観が悪くなり、観光へのダメージもあります。


また、大きな人工物が山・里・海の間の循環をさえぎり、

生態系への影響も考えられます。


 
そのE 作るのにたくさんのお金がかかります。

このダムの建設費は185億円かかります。

負担は国が半分、

後は県や町が負担しなければなりません。


大きな工事なので、

島の工事業者が請け負うのは周辺工事の下請けだけ。

あとのお金は島外の大手ゼネコンに流れていきます。


ゼネコンがダム工事を請負えば粗利は約20%とも言われています。


185億円の内海ダムなら37億円の計算に。

 早明浦ダムより長い堰堤ですが、


貯水量はわずか300分の1!

とっても非効率なダムです。


狭い谷川で、わき水もありません。

ダムの底の土地も小さい岩でできているので、

水が抜けていく恐れもあります。


肝心な渇水時に水がたまらないダムなのです。



<参考資料>





 内海ダムの問題を説明しているBS番組の動画です。




県のデータに対しての疑問点についての具体的な説明や

矛盾点などを分かりやすく説明されています。



ダム直下の神懸通りに住む山西さんが

裁判の中で語った気持ちです。





たしかに、工事している数年間は、

地元に経済効果をもたらすかもしれません。


しかし、ダムの直下にわざわざ引っ越そうという人はいません。

ますますの過疎化、地価の下落を招くことも予想されます。


また数十年後に作ったダムが老朽化したり、

砂がたまった時にどうするのか。


その後に残されるものは

子や孫の代が背負わなければなりません。


このダムを作ることで得られるもの、

そして失うもの。


もう決まってしまったこと、と投げ出さずに、

もう一度、よく考えてみることが

大切ではないでしょうか。




















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